その当時、私は諏訪湖のほとりに住んでいた。
幸いにも仕事の関係もあり、持っていたパソコンで周辺の弁護士事務所を探し、夕刻を眺めながら訪ね歩いた。
私は早足だったように思う。
『ほかの県?九州?あー、私んとこじゃ無理ですね。』
何回断られたか覚えていない。
ブラインドから灯りが漏れる場所に着いて、扉を開けた。
あの、すみません。ご相談なんですが・・
初老で白髪の男性だった。
『立ち話しじゃ、落ち着かないでしょ。まあ、座って。』
私は全てをその人に打ち明けた。
『わかりました。罰金は払えばいい。ただ、あなたのお父さんが更生できるかは・・』
ですよね。
『何回もパクられてるようじゃ、次は(刑務所に)放り込まれるのは確定だね。』
『それで、キミがお父さんの身元を引き受けたら、どうする気だい?
世の中甘くない。前科者を安々と受け入れてくれる会社なんぞ、あるわけない。
それでも、(身元を)引き受けるんなら・・・覚悟決めておいたほうがいい。』
『詳しいことは分からんが、失礼かもしれんが、あなたの親は、バカだ。
そのバカを引き受けるってことは、振り回される。今までもそうだったんだろ?』
・・・はい。
『親のこころ、子知らず・・・の逆だな。』
その人は笑った。高らかに笑った。
『いいかい。君はここに相談に来たんじゃない。たまたま、私と知り合ったんだ。
そして、今から私がいうのはアドバイスだ。お金はいらない。』
その人は話しを続けた。無心で私はメモをとった。