先述のブログに登場した(私の。認めたくはないが)父親には後日談がある。
祖父母の死後から数年。
私の元へ一通の電報が届いた。
差出人に覚えがない。
チチシキュウので、2、3日は放っておいた。
が、どうしても気になった。見返してみれば
チチ シキュウ カエラレタシ
父親に何かがあったのは分かる。しかし差出人に心当たりがない。
確かめたい
と、思った。
115に電話をして、電報の文書番号や到着日を告げたら、あっさりと解決した。
『差出人の方にご連絡致しますので、折り返しをお待ちください。』
2時間くらいあと。電話が鳴った。
『差出人の方から許可を頂きましたので、ご連絡先をお伝えします。』
走り書きでメモをとった。
そのメモ書きを見ながら電報の差出人であろう人に電話をかけた。
〇〇と申します。
大変恐縮ですが、私に電報を差し出されたのは、そちら様とうかがったのですが。
返って来た声は中年男性だった。
『あー、間違いねーよ。うちだよ。■■■だよ。』
それで、あの電報の意味は、その・・・なんなんでしょうか?
『あー、あれな。アンタの親父が、また事件を起こしちまってよ。
今、警察に拘留中なんだけどよ。あと何日かで釈放されるんで、身元引受人・・・』
事は容易に想像できた。
あの、なんで、私の住所をご存知・・・
『あー、なんでも刑事課の連中がさ、オヤジさんの戸籍を調べたら、おまえさんの住所が出てきたんだわ。それ刑事さんが教えてくれてな。それで電報送ってみたんだわ。』
それで?
『いや、ウチじゃできねぇから。息子のあんたなら、と思ってさ。』
その人は言葉を続けた。
『妹さん・・・だっけ。頼んだんだけどよぉ。もう嫌だって、断られちまって。』
勝手に話が進んだ。
『あんたが引き受けるなら、罰金30万でムショイキは勘弁してくれるんだと。
ただ、執行猶予はつくらしいけどな。』
私は、絨毯敷きの床に拳(こぶし)を押し付けた。
明日の夕方、ご連絡します。
『まあ、考えといてくれや。』
そのあと、閉まるか閉まらないかの弁護士事務所を訪ね歩いた。