時のすぎゆくままに

俗称:障がい者夫婦。上手くやれるわけないと否定された世の中を、なんとか、かんとか生きています。

警報音

さて、本日ひといきの間です。

 

今では少なくなった『消防分団』。

簡単に言えば地元住民の有志の集まりで防犯・防火・火災初期消火の活動を主とする。

 

私の幼少期の福岡には、1つの町に『第1~第12分団』とかは珍しくなかった。

毎週一回は分駐所の2階に灯りがついて、大人の笑い声が聞こえた。

 

ちょうど今ぐらいの季節だったと思う。

毎日のように火事が起きた。

 

分駐所が発するサイレンにも意味があった。

 

ポォーーーッ!ポォーーーッ!ポォーーーッ!ポォーーーッ!ポォーーーッ!

※分駐所から火災現場が遠い、または他の町への応援要請

 

ポォーーッ!ポッ!ポッ!ポッ!ポォーーッ!ポッ!ポッ!ポッ!ポォーーッ!

※大火事・緊急を要する・火災現場と分駐所が近い場合

 

このサイレンは分団員への出動呼びかけの合図で、

祖母がお世話になっていた電気屋のおじさんも分団員だった。

我が家のテレビの修理に来ていた電気屋のおじさんは、いつもサイレンを気にしていたようだった。

いつもサイレンの一発目で、電気屋のおじさんの表情が変わった。

 

『ちょっと(火災現場が)近いようやから、明日また来ますわ。』

 

と言い終えた時には、電気屋のおじさんは分団員の半被を着ていた。

 

『最近多いなぁ。また来ますんで。』

と言い残して、おじさんは消えた。

 

しかし数日後、電気屋のおじさんが消火用ホースを道にばら撒く姿を目にした。

表情は険しく、紺色の半被を着た大人の塊が無言で動いていた。

 

『ばあちゃん!こっちくんな!ダメだ!逃げろ!離れろ!』

『とにかく下がれ!みんな下がれ!みせもんじゃねぇっ!』

 

本署の大型消防車が着いた頃には火が消えていた。

そんなことを何度も見た。

 

なので、私は警報音が苦手。

就職を目の前にして、友達の家が燃えた。

その時にも、電気屋のおじさんがいた。

 

あとで、火事だった家が友達の家だったことを電気屋のおじさんに伝えたら

『不審火だった』

と教えてくれた。

 

昨年末。私の町の回覧板には1枚の紙が挟んであった。

 

『町内会費で消防用ポンプを購入しました。』

 

私の町は木造建造物密集地帯だ。幸いなことに、この町に妻と越してきてから

火事は一件もなかった。

 

街の広報紙には町内会一覧が毎回載っている。

 

火事の怖さを知っている町。そうに違いない。