時のすぎゆくままに

俗称:障がい者夫婦。上手くやれるわけないと否定された世の中を、なんとか、かんとか生きています。

不良品

ものつくりが『ユニット化』されて久しいのですが。

 

若かりしの時。

時は光学ディスクが『コンパクト・ディスク(CD-R/CD-RW)』から『デジタル・ビデオ・ディスクorデジタル・ヴァーサタイル・ディスク(DVD-R/DVD-RWなど)』への変革期であり、1日の生産台数は合わせて1000台以上という小規模な企業にとっては異常な値でした。

 

従業員数20人余り(派遣社員含む)。

そこに『組み立て自動機』はなく、ほぼ手作業であり、流れ作業で組み立て、手作業でオシロスコープを見ながら『ジッター値』を合わせ・・・という感じでした。

私の担当ラインは、高品質を求める納入先が多く、時には次世代向けかつ高品質という難題があり。

 

とある日。

 

ライン長のもとにメールが舞いこんだのでした。

 

当時、廉価品のほぼ全数は中国の委託生産に頼り、最終検査は私の会社の者が行っていた・・・はずでした。

 

ところが。

 

『〇月〇日到着便の貨物から、不良品を送る。そっちで対応してくれ。』

とのこと。

 

毎日の生産で手一杯であるにも関わらず、ライン内に異様な空気が流れたのでした。

 

到着した荷物を開封し、中には静然と並んだ『ピックアップユニット』。

しかも、不良品がどれだか、印もなく記載もなく。

こんな箱が1日に10箱以上届いたんです。※1箱入り数=240

 

『おい!とにかく全数検査だ!検査だ!検査!』

ちょ、ちょっと待って下さい。X社向けのユニットはどうするんですか?

『そんなの、どうでもいい!俺の言うことを聞け!』

お、落ち着いてください!中国のラインは止めたんですか?

『・・・いや、止めていない。連絡が来てない。。。』

『いいから!いいから!並行作業だ!並行作業だ!』

Y社向けの試作品は今週末の納品ですよ?

『それもいい!どうでもいい!とにかくやれ!やれと言ったやるんだ!』

 

もう地獄の始まりですよ。こんなの。

 

中国の生産ラインは止めてない。不良の原因も分かってない。X社向けの量産品は作れ。Y社向けの試作品は、やめろ。それに中国の生産委託品は、調べろ。

 

かなり混乱しました。

そして事件が起こります。

 

X社向け出荷品の中に、中国の生産委託品(不良品)が混じったのです。

X社向けも、中国の生産委託品も、形は同じ。

同じであってもレーザーの波長が違う。プリズムの質が違う。

 

当然、X社向けの出荷品は戻ってきました。

 

段ボールの型も同じ。段ボールの中も同じ。

 

マジック、みんな持ってるよね?中国のは赤点。X社向けは黒。Y社向けは・・・納期、考えてもらおう!

 

試作部から計測器の数々を借り、数が足りないとみれば、レンタル会社へ手配をし。

 

----なんで、俺が・・・

 

そう思いながらも、焦るばかりでした。

 

※あとで知りましたが、中国の生産委託品はX社向けの『廉価品』だった、とのこと。

 ですので、オシロスコープでジッター値を計測すれば、微妙なノイズや波形のトップの変調が見られたのです。

 

おそらく、何週間はかかったかと思います。

 

検査工程では、『これは、中国』『これは、自社生産』と振り分け、中国の生産委託品は合格であれば赤丸を付け、自社生産品は黒丸を付け・・・

 

中国からの『不良品』の流れは止まらず。

 

やっと、追いついたか・・・

 

と思い、ライン長に

 

なんで、(中国の生産ライン)止めなかったんですか?!

 

と、怒鳴ったのです。

 

ライン長は無口でした。

 

その一か月後・・・だったかな。

 

辞めます!お栄え下さい!(結構、これ、嫌みですよね。苦笑)

 

 

 

その数か月後。

整然とした会社は、買収されたのでした。

 

そして、不然か偶然なのか。

 

町の中で、同輩と会いまして。

 

『俺、地元帰るよ。早期退職金だってさ。』

 

背中を丸めた同輩に対し、言葉が出なかった。。。

でも怒りはあった。

 

それをどこへ向けてよいのやら・・・私には分かりませんでした。

解けませんでした。

 

そして、会社は技術を骨抜きにされ・・・

 

今も形だけはあります。

 

こころのこり・・・って言ううんですかねぇ。。

 

※このような情景を、たくさん見てきました。