それから、数か月。
父親の評判は良かった。
ペンションのオーナーからは『罰金の30万、払っておいたよ。(父親の)給与から天引きになるけどね。』と連絡も頂いた。
季節は冬を迎え、高原のスキー場はどこも活気づき、そんな中、私は父親の働くペンションへ向かった。
ペンションの前や空き地には、スキー客を運ぶバスが並び、多客時を告げていた。
父親の仕事が終わった後、父親の部屋へ行った。
整然とされた部屋。だったが、部屋の隅に置かれたチューハイの空き缶に目がいった。
・・・もしや。
年が明けた頃。朝7時ごろ。私の電話が鳴った。
『親父さん、そこに居ないか?』
いや、居ませんが。
『部屋に居ないんだよ。寝坊でもしてるのかと思って行ったら、居ないんだよ!』
やらかした。逃げた。
『朝から申し訳ないが、そっち(私の部屋)行ってもいいかな?』
疑われている。私の部屋が。
2時間くらい後。オーナーが来た。
『いいから、車乗って!』
着いた先は親父の部屋だった場所。
『いくらなんでもなあ。。これ、見てくれよ。』
万年床のような布団の横に、整列したチューハイの缶と弁当の食べかす。
『近所の人がゴミ出しの時に、見かけたらしいんだ。荷物持ってる人。』
私は把握していた。その高原から朝6時前と昼・夕方と麓の駅へ向かうバスがあることを。
『なあ。更生できないのは、いつもこれなんだ。』
すみません。申し訳ないです。
泣きながら謝るしかなかったです。
どこまで、人の善意を踏みにじったら気が済むんだ!
『いいよ。なかったことにする。するけど。、俺は、ぶん殴っていいかな?』
いいです。ぶん殴っていいです。
私が殴られると思っていた。でもオーナーは殴らなかった。
お時間頂けますか。あと、掃除機借ります。
親父が居た部屋を片付けた。
チューハイの空き缶が2袋。弁当カスやその他ゴミ、1袋。
何事もない部屋に片付いたのは昼過ぎだった。
オーナーは麓の駅まで私を送ってくれた。文句ひとつ言わずに。
季節は夏を迎え、ペンションのオーナーは全国各地から評判を迎え、有限会社が株式会社になった。
『お元気ですか。〇〇です。』
手紙を出してみた。返事は無かった。
なかったことにする。そういうことだった。