時のすぎゆくままに

俗称:障がい者夫婦。上手くやれるわけないと否定された世の中を、なんとか、かんとか生きています。

クソ親父にチャンスを④

colors1971.hatenablog.com

異業種交流会で知りあった人。

その人は脱サラをし、長野の高原にペンションを持っていて、事業拡大を狙っていた人だった。すでに複数のペンションを建築中であり、一部はその年の冬を見込んで内装工事まで済ませていた。

その人の口癖は『いい人がいない。』

いつ会っても『いい人がいない。』

 

条件は

大型二種免許所持

※大型一種の場合は会社負担で取得させる

住み込み

年間を通じて、長野各地の自然を案内できる

ペンション等の施設・設備を修理・営繕できる

週休二日保証

多客時は臨時賞与(夏冬賞与もあり)

 

父親は大型一種は持っていた。

あとは父親が耐えられるかどうか。

 

私は取り急ぎ、その人に電話をかけて全てを打ち明けた。

 

厳しい答えが返ってきた。

 

『まあ、過去のことは過去のこととして。あとは本人のやる気なんだよなあ。』

ありがとうございます。

『とりあえず、親父さん来るんだろ。その週の土曜日(私の部屋に)行くよ。』

ありがとうございます。

 

私は松本で父親を迎え、諏訪湖のほとりの私の部屋へ急いだ。

私の部屋へ着けば、私は父親に誓約書を書かせた。

 

・どんなに怒りを覚えても、暴力は振るうな。

・限られた金額で生活を覚えろ。

・あんたは他人だ。子供から自立しろ。

 

私は鬼と化した。

 

誓約書を書きながら『親子だろ』だの、どうだろ、と言い始める。

 

 

でめぇな、どんだけの人に迷惑かけて、どんだけの人に頭下げさせたんだ?

おまえは人間か?贅沢言える立場か?

言ってみろ!言ってみろぉー!!!!!

 

土下座を始めた父親を私は踏みつけた。

 

いいか。これで済むと思うな。てめぇと『家族ごっこ』なんぞは卒園式だ!

 

その週の土曜日。ペンションのオーナーが私の部屋に来た。

 

『いいですか。これから、あなたは、お客様を迎える仕事に就きます。

 お客様のクレームを受けるような人間じゃ困るんだ。

 あなたもいい大人でしょうよ。

 息子さんに頭まで下げさせて。恥を知りなさい。

 過去のことは過去として、目は瞑ります。

 私も真っ当な善の道を歩んできたわけでないし、それを私は認めます。

 いいですか。罪を犯しても、更生できた人は山ほどいる。

 その道を辿るには、つつましく生きること。

 それが、あなたに出来ますか?』

 

今、思い返しても、かなり厳しい問いかけだったと思う。

 

数分、父親は黙った。

 

『できますか?』

 

父親は小さな声で答えた。

 

・・はい・・・

 

『とりあえず、見習い・・・といきますか。。。』

 

その場で仮採用が決まり、父親はオーナーの車に荷物と一緒に乗り込んで、高原へ向かった。11月某日。