まだ眠くないので、もう一筆。
まだ私が30代のころ。
私は所用があり、東京のとある大学の正門の近くを通りかかった。
が、何か妙な雰囲気だった。
大学の正門が近くなるにつれ、何かを訴える声は次第に大きくなっていく。
『学費値上げ、反対っ!』
『はんたーいっ!』
その声が大きくになるにつれ、大学周辺に停まっている『車両』が妙だった・・・
その時に停まっていたのは・・・
紺色のハイルーフのハイエース数台に、警視庁の人員輸送車と思われる中型バス数台。
それに隠れるようにして、スーツ姿の男性約30名。
しかし、大学の正門あたりから、声は続く。
『私は、この大学の不当な学費値上げに反対する為、京都から来ましたっ!』
そして、その若者が語り終えた後。
人員輸送車の陰に隠れていたスーツ姿の男性が、右腕をまっすぐに天に掲げた。
それと同時に車両の陰に隠れていたスーツ姿の集団が大学の正門内に走り込み、学費値上げの反対を訴えていた学生たちを取り囲んだのだ。
私は思った。
学費の値上げの反対を訴えて何が悪い。
別に主張しても良いではないか。
時は昼の12時を過ぎている。
別に講義中ではない。
訴えは、校舎側には向いていない。
よって、講義の妨げになるようなことはしていない。
しかし、大学側としては都合が悪かったのであろう。
このスーツ姿の輩集団を呼んだのは、大学だ。
私がその大学の正門の前を通り過ぎようとしたとき。
女性の悲鳴が聞こえた。
それを隠すように大学の正門の前にはスーツ姿の輩が10人ほど並んだ。
私はそれを睨みながら、右手で拳を握り、その場をあとにした。